- DIYで出来るハウスの台風対策の補強
- 台風や強風が来る場合の備えとメンテナンス
- 換気扇の役割と必要性
ビニールハウスを「ビニールハウスキット」だけの基本セットで建てると十分な強度が足りず、風で飛んでしまったり金属の支柱が曲がったりする可能性があります。
雪が積もるエリアで使う場合も補強しないと雪の重みで曲がってしまいます。
札幌市で「ビニールハウスキット(南栄工業)(10.5坪用)」をDIYで作って栽培している経験からビニールハウスの雪対策・風対策を紹介します。
ビニールハウスについて自分で細かく知りたい方は渡辺パイプ㈱のマニュアル(無料配布)が非常に参考になりました。無料登録で簡単にダウンロード出来ます。ちなみに変な勧誘とか一切無く私とも利害関係は全くありません。笑
自分のビニールハウスに風対策が必要かどうかの調べ方
私はビニールハウスキット(南栄工業)(10.5坪用)を購入して自分でDIYで建てたのですが、果たして本当に風で飛ばないのか、雪で潰れないのか疑問でした。
周辺を住宅に囲まれた庭なので、雪で潰れると被害は自分だけだからまだ良いが、風で飛んで行って周辺の家を破壊すると大変な事になります。
10.5坪のビニールハウスとは自分が高さが3mほど、横幅5mほどでかなり大型です。これが飛んでいくとなると大事になるので「家庭菜園で楽しくやる」ためにしっかりと補強をして近隣住民に迷惑にならないよう補強を考えました。
調べると強度的に補強しないと万が一の事があり得るとわかったので、風や雪への日々の備えと具体的な補強方法を紹介します。
最大瞬間風速の調べ方
まずは風に対する補強が必要かを知るためには自分のエリアにどの程度の風が吹くのかを調べる必要があるので、その調べ方を紹介します。
気象庁が各エリアの過去の様々な計測データを公表しているので、統計開始~現在までの1位~10位の最大瞬間風速をエリア別に調べられるのでこれを目安にします。
画像は+をクリック
最大瞬間風速の調べ方の手順(画像)はここをクリック
「地点ごとの観測史上1~10位の値」を選ぶ
各地域毎に様々な過去のデータがわかります
「最大瞬間風速」を調べる
ビニールハウスの風対策の補強で必要な数字は最大瞬間風速がどれくらいかです。
札幌の数字だと最大50.2m/㎡、平均で35m/㎡の強風が10位以内に入っている感じです。
風対策は50.2mまで対応できれば安心、35m/㎡前後まで対応していれば基本的には問題なさそうとわかります。
ビニールハウスの台風(強風)対策の備えと管理
- ビニールフィルムの破れがないか
- ネジやくさびに緩みがないか
- パイプ差込深さの確認(土の埋め戻し)
- パイプやパーツが錆びて劣化していないか
- ハウス周辺に飛びそうな物がないか
- ハウスバンド・スプリング・パッカーはしっかりと止まっているか
- ドアがきちんと閉まっているか
- 換気扇は作動しているか
- 換気巻き上げ装置は固定してるか
- ビニールを破る必要はあるか
まずは台風が近づいて来た時に補強ではなく、メンテナンスをして台風に備える方法です。
これらの項目をチェックして台風襲来に備えます。
基本的な補強はこれらの項目がしっかりとやってある場合に+αで有効です。
ビニールフィルムの破れがないか
ビニールに穴があいていると隙間から風が入り、ハウス全体がバルーンのようになって浮き上がってしまう可能性があります。
もし穴が空いている場所を発見したら、補強用テープがあるので張りましょう。1つ持っておくと急な大風にもすぐ対応できて便利です。
ネジやくさびに緩みがないか
ねじやくさびが緩んでいたり錆ていると本来の固定能力が発揮されず風で外れてしまったり、外れた事で風が吹き込む原因になります。
交換するかしっかりと金槌やドライバーで締めなおしましょう。
パイプ差込深さの確認(土の埋め戻し)
ビニールハウスの裾のビニールやパイプは土で埋めています。
土が流れていると埋め込み深さが十分でないので風で引き抜かれてしますので埋め戻してしっかり固定します。
パイプやパーツが錆びて劣化していないか
ビニールハウスの基礎のパイプが錆びていると本来の強度が無いので、倒壊の危険性があります。
パイプを取り替えるのが急で難しい場合はハウス内部に1本新品のパイプを刺して固定して補強する方法がおすすめ。
内側に短いパイプを挿して、クロスワンというパーツで錆びたパイプと固定すると簡単に補強できます。
ハウス周辺に飛びそうな物がないか
ビニールハウスの周辺に風で飛ばされそうな物があると飛んできた衝撃でビニールが破ける原因になります。
破れた箇所から一気に裂けるので、周辺をきれいにしておきましょう。
ハウスバンド・スプリング・パッカーはしっかりと止まっているか
ビニールハウス全体を止めているハウスバンドが風でバタバタと外れてしまうとビニールの間から風が入ってしまう原因になります。
スプリングなど全体的にチェックをして留まっているか調べましょう。
ドアがきちんと閉まっているか
ドアが緩んでいると隙間から風が入ってビニールハウスが飛んでしまう原因になります。
ドアをしっかりと閉める、更にカンヌキを設置する方法もおすすめです。
換気扇は作動しているか
換気扇を設置している場合は換気扇は作動させたままにしましょう。
換気扇で中の気圧を下げる事で、ビニールがぴったりとパイプに張り付きビニールの浮き上がりを防止する為です。
換気巻き上げ装置は固定する
手動や自動でサイドのビニールを巻き上げ装置を設置している場合は、風が隙間から中に侵入するのを防ぐ為に固定する必要があります。開けっ放しにするよりも、閉め切ったほうがハウスは強くなります。
そこで、一番簡単に出来るのは妻面(ドア側と反対側の1.35mほど)を防風ネットで固定、ビニールの隙間を更にビニール補修用のテープで止める方法です。
台風通過後はビニールテープを剥がし、防風ネットを外すだけで簡単ですが風が中に入るのを防ぎサイドビニールがバタつくのを防止します。
ビニールを破る必要はあるか
補強の対策にはなっていませんが、ビニールを全て破ってしまい金属だけにするという方法もハウスを守るという観点では有効です。
あまりにもすごい台風がくる場合、作物よりもハウスを優先したい人はビニールを破ってしまう方法もあります。
台風通過中は人命優先のため無理な作業はやめましょう。台風が来る前にヘルメットなどをして安全な状態で行います。
ビニールハウスの台風(強風)対策の補強方法
- 基礎の地面を固定する
- タイバーを入れる
- 暴風ネットで柵を作る
これまで紹介したのは台風が来る前に「保守点検や管理をする対策」でした。
次に「ビニールハウス本体補強をしての強度をあげる方法」を紹介します。どれも専用の資材が必要ですが難易度としてはDIYでも可能な方法が多くあります。
基礎の地面を固定(根がらみ)する
ビニールハウス全体の10%の強度UP
ビニールハウスのパイプは地面に挿さっているだけなので風でビニールに引っ張られるとパイプが抜ける可能性があります。
このパイプを更に地中でしっかりと固定する補強方法で、以下の通り何種類か方法があります。
- 地中にセメントで基礎を作って固定
- 地中に重りをつけて固定
- 地中に横通しパイプをつけてスクリュー杭で固定
私がおすすめするのは「横通しパイプをつけてスクリュー杭で固定する方法」です。地面が硬すぎるとスクリュー杭が入らないので出来ない可能性がありますが、その場合は他の2つの方法を選ぶとよいです。
「セメントで基礎を作りパイプを何か所か固定する方法」「重りをつけて固定する方法」もあります。デメリットはDIYでやる場合セメント作りは結構大変な作業とやり直しがききません。
重りをつけて固定するには横通しパイプを通す必要がスクリュー杭と同じくあり、パイプに重りを固定するには「強力なワイヤーや針金を用意して固定しないといけない」ので割と作業が大変な印象です。
タイバーを入れる
タイバーの種類 | 設置数 | 耐風向上力 | 耐雪向上力 |
---|---|---|---|
T型 | 全部に設置 | ×1.2倍 | 不明 |
T型 | 4スパン毎 | +6% | +43% |
X型 | 全部に設置 | ×1.3倍 | 不明 |
X型 | 4スパン毎 | +9% | +65% |
ハウス内のアーチパイプ(天井部分)にT字型もしくはX型で補強用のパイプ(タイバー)を入れると耐風力がUPします。
4スパン毎に入れる、全部に設置する場合で補強力が変わりますが、T型よりもX型の方が補強力は強いです。
必要な資材(固定するパーツ)はそれぞれ違いますが「一番高い場所から4分の1の高さに設置する」という設置場所を守らないと正しい強度になりません。
正しい場所に設置する事、パーツを集める事、パイプをホームセンターなどで購入して用意する事ができればDIYで十分可能です。
私がT型タイバーをDIYで設置した具体的な方法は「ビニールハウスにDIYでT字型タイバーを設置して補強する方法」で紹介しています。
暴風ネットで柵を作る
強度UP度は未確認
単管パイプと暴風ネットで柵をビニールハウスの周辺に作り、ハウスに当たる風自体を弱める方法です。
かなり大がかりな設備で、ビニールハウスの天井高さ以上の高さの柵が必要です。
作業が大変であったり、長く頑丈なパイプが必要など家庭菜園ではなかなか難しい方法です。具体的な暴風柵の作り方は下記参考にしてください。
ビニールハウスの換気扇の役割と必要性
- 換気方法はサイド巻き上げがおすすめ
- 換気扇は家庭菜園レベル(10坪前後)では不要
- 換気扇には電気を使わない自動換気がある
- ハウス内の高い位置の排熱が出来る
- ハウス内の温度の急激な上昇を避けられる
- 台風などの大風でもハウス内が低圧になりビニールが飛びにくい
- 電気が必要な物は電気の引き込みが必要
- 電気が不要なタイプもあるがコストはかかる
ビニールハウスは夏は換気をしないと中の温度が50℃など高温になり野菜が枯れてしまうので必ず換気が必要になります。
側面のビニールを巻き上げる方法(自動・手動)が一般的で家庭菜園のサイズ10坪前後の大きさであれば換気扇までは不要だと思います。
サイド巻き上げは必須でビニールハウスを使うなら基本的に設置する必要があり、設備的には複雑な仕組みでは無いのでパーツをそろえればDIYでも作れます。
換気扇を設置するメリットはハウス内の高い位置の熱を排熱できる事と、台風など大風が来た時にもハウス内の圧力を低くする事、天井の熱はハウス内の上に溜まるので、サイド巻き上げで換気をしてもハウスの高い位置に熱が溜まり天井近くまで育つ野菜にとって高温になります。他にも、気温が高い時に急いでビニールを巻き上げにいかなくても、ある程度の排気をしてくれるので温度上昇が緩やかで野菜への被害が少ない事があげられます。
ただ、サイド巻き上げをしなくて良いという程の効果では無いのかなと思います。
家庭菜園で換気扇を設置したい場合、天井に穴を開けて差し込むだけで自動で温度感知して排気してくれる電気不要タイプがありおすすめ。
【実例】我が家のビニールハウスキット(OH4575)10.5坪で紹介
最後に、実際に私が使っているビニールハウスキット(南栄工業)(OH4575)10.5坪用で札幌(冬は50㎝雪が降る日もある)で使った場合に風対策・雪対策で補強する様子を紹介します。
まずは、最初に紹介した「最大瞬間風速の調べ方」で札幌エリアの風速を調べます。
数字を見ると、札幌エリアは最大50.2m/s(2004年/9月)、2位以下は35m/s前後の最大瞬間風速を記録している事がわかります。
私のビニールハウスキットがこの風速に耐えられるのかを調べます。
【風対策】南栄工業ビニールハウスキット(OH4575)
ビニールハウスキット(南栄工業)のアーチパイプは直径25.4㎜の太さの金属パイプです。
京都府のマニュアルによるとこの太さの場合、間口6.0m・アーチパイプのピッチ50㎝で最大瞬間風速27~33m/sまで基本的に耐えられる構造です。
南栄工業のビニールハウスキットの付属のマニュアル通りに作れば間口5.6m、パイプピッチ50㎝で同じ条件です。
つまり気象庁のデータで調べた、1位の風速50.2m/s(2004年/9月)にはもちろん、2位以下の35m/s前後でも十分な強度が無いとわかります。
そこで私が行った補強は下記3つです。
対策 | 内容 | 効果 | 上昇率 |
---|---|---|---|
風・雪対策 | 根がらみの設置 | 風への耐久性・雪でハウス全体の沈下防止 | 10%程の強度UP |
風・雪対策 | T型ダイパーの設置 | 風と雪への耐久性 | 1.2倍に強度UP |
風・雪対策 | パイプピッチ50㎝を30㎝間隔に | 雪への耐久性 | 1.6倍に強度UP |
雪対策 | 中柱の設置 | 風と雪への耐久性 | 耐雪25kg/㎡向上 |
マニュアル通りに作り最大瞬間風速27㎡/sまで耐えられるハウスと考えると、ハウスが下記の通り補強されます。
内容 | 効果 | 計算方法 | 補強度合 |
---|---|---|---|
根がらみの設置 | 10%程の強度UP | 27×0.1=2.7㎡/s | +2.7㎡/s |
T型ダイパーの設置 | 1.2倍に強度UP | 27×1.2=32.4㎡/s | +5.4㎡/s |
パイプピッチ50㎝を30㎝間隔に | 1.6倍に強度UP | 27×1.6=43.2㎡/s | +16.2㎡/s |
合計すると+24.6㎡/sの補強となり、27㎡/sまで耐えられるハウスが51.6㎡/sまで耐えられるハウスになりました。
札幌では最大風速50.2m/sが最大なので、この補強で過去1位だった風にも耐えられる計算です。
【雪対策】南栄工業ビニールハウスキット(OH4575)
私は冬の12月~2月はビニールを剥がし金属パイプだけ残して栽培はしていません。
ハウスの両側の除雪だけして、そのままの状態で春近くなってまだ雪がある時期に少し早めにハウスを掘り出して、ビニールを張って露地栽培よりも少し早く栽培出来るという使い方をしています。
冬にビニールハウス内で栽培するには暖房が必要で、家庭菜園は販売するわけでは無いのでコスト面で考えると損をする場合がほとんどです。
ただしパイプが曲がるといけないので補強を考える場合、最大瞬間風速を調べた時と同様に気象庁のデータを見て「最深積雪(月)」を調べます。
例えば札幌だと、ひと月に最大150㎝前後という事がわかるので、除雪しないでほったらかしにした場合は150㎏(1㎝=1㎏換算)に耐えられるハウスを作る必要があります。
一般社団法人日本施設園芸協会に「基本ハウスの耐雪が何キロか計算する方法」がありますが、直径25.4㎜の太さの金属パイプの今回のハウスキット(OH-4575
私が実際にDIYで行った、T型ダイパー、中柱の設置、ハウスピッチを30㎝にという補強をした場合でも70㎏/㎡程にしかならないので十分な強度がありません。
ただし、これはビニールを張って除雪も何もせずハウスの上に雪が積もった場合を指すので、実際には除雪をする・骨組みだけにするなどで補強が足りない分を補えば十分という計算にもなります。
札幌の場合は最深積雪(日)は60㎝なので、補強をすれば雪が降った時にハウスの上と周辺の除雪を周辺しておけば基本的には潰れないハウスにはなります。
豪雪地帯の農家は31.8㎜以上の太さのパイプを使い、暖房をつけて、周辺を除雪してという作業を全て行っています。
ただし、家庭菜園でやる場合は冬にビニールを張って使うというのは雪が降る量にもよりますがコスト面で現実的では無い事が多いと思います。
まとめ
- 風対策と雪対策はDIYで出来る
- パーツを揃える必要と必要な補強力の計算が必要
- 豪雪地帯では家庭菜園はビニールを外すのがおすすめ
南栄工業のビニールハウスキットには専用の補強セットはオプションでありません。
ビニールハウスのサイド手動換気システムのセット、天井に設置する自動換気装置はありますが補強は自分でパーツを揃える必要があります。
DIYでも十分出来るので、私が行った3つの具体的な補強方法は別記事で個別に紹介しているので参考にしてください。