- 堆肥の種類の違い
- 堆肥を入れる意味
- 家庭菜園でおすすめの堆肥
堆肥のポイント
家庭菜園で使う堆肥で迷ったら安価に手に入る牛糞堆肥がおすすめ。
毎年堆肥を使うと10年くらいで土がよくなります。次の年に違う種類の堆肥も使ってみよう。
苦土石灰と使う時は植え付けの2~3週間前、有機石灰(牡蠣殻等)と使う時は2週間前に土に入れましょう。
もくじ
堆肥の種類・成分・各資材の特徴
表の補足情報
- 使用量の目安は参考値。購入した商品のパッケージを参考にする事。
- ホームセンター取り扱いは近所で調査。店舗により取り扱いに違いあり。
動物性堆肥
- 牛糞(ぎゅうふん)堆肥
- 豚糞(とんぷん)堆肥
- 鶏糞(けいふん)堆肥
- 馬糞(ばふん)堆肥
植物性堆肥
- もみ殻堆肥
- 腐葉土
- バーク堆肥
- 生ごみ堆肥
それぞれの堆肥の特徴を紹介します。
まず第一に知っておくべきは、堆肥の成分は販売されている商品ごとに異なるということです。
例えば、同じ牛糞でも傾向はありますが、すべての商品が同じ成分ではありません。これは、牛が食べているエサや、牛糞以外にオガクズや稲わらのような副資材が含まれているか、どの程度含まれているかが異なるためです。
同じ種類の堆肥で比較して細かく分析するのは難しいので、家庭菜園レベルでは「完熟堆肥であるか」「どんな堆肥を使うか」で判断すれば大丈夫です。
牛糞(ぎゅうふん)堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
動物性 |
牛の糞に、おがくずやもみ殻、ワラ、ウッドチップなどの植物性副資材を混ぜて発酵させたものです。
食べているエサが藁などの植物の為、栄養成分は低く土をふかふかにする土壌改良の効果が高いです。
他の堆肥とも共通していますが、きちんと発酵させた物「完熟堆肥」を選べば近所に気になるような匂いはありません。
安価で手に入れやすく使いやすいので最も家庭菜園初心者におすすめな堆肥です。
豚糞(とんぷん)堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
動物性 |
豚のふんに、おがくずなどを堆積させて発酵させたものです。
豚は油粕など栄養価が高い物を食べるので肥料分を多く含みます。
豚糞(とんぷん)堆肥は牛糞(ぎゅうふん)と鶏糞(けいふん)の中間の成分で、肥料分も高く微量成分である鉄や亜鉛も含んでいます。
価格は少し高めで、土壌改良効果もありますが肥料分が多いので元肥えとして肥料として使う方法がおすすめ。
なかなか手に入りにくいので家庭菜園では鶏糞の方がコストも安く同じように使えるのでおすすめです。
鶏糞(けいふん)堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
動物性 |
鶏のふんに、おがくずなどを堆積させて発酵させたものです。
採卵鶏の糞を使っている資材がほとんどですが、採卵糞は餌に卵の殻を使っているので石灰(カルシウム)分を多く含みます。
また、豚糞と比較すると窒素は少し低くリン・カリが多い特徴があります。
鶏糞堆肥は豚ぷん堆肥と同じく肥料成分が多いので、堆肥としてよりも元肥えとして肥料で使う方法がおすすめです。
馬糞(ばふん)堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
動物性 |
馬のふんに、ワラなど植物性の資材を堆積させて発酵させたものです。
馬糞堆肥は牛糞堆肥と同じように馬が藁など植物性のエサを食べているので、土壌改良効果が高く土をふかふかにするので堆肥としておすすめですが価格が牛糞よりも高いです。
肥料成分が牛糞よりも少なく、排水性など土壌改良効果は高く、収穫量や野菜の品質が牛糞堆肥よりアップするといわれています。
少し金額が高くても土壌改良効果が高い堆肥を使ってみたい人にはおすすめ。
もみ殻堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
植物性 |
もみ殻(お米の殻)に米ぬかや鶏糞をサンドイッチ状にして発酵させたものです。
粘土質の土に混ぜると排水性が向上、砂質の土に混ぜると保水性が向上します。
ちなみに、もみ殻を炭にした物がもみがら燻炭で土壌改良剤として、生のもみ殻は保水性は無く排水性があるので粘土質の土に混ぜて排水性向上の目的で使われます。
農家などでは自作する事ができますが家庭菜園ではもみ殻が手に入りにくいので作りづらく販売もあまりされていません。
腐葉土
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
植物性 |
腐葉土は広葉樹の落ち葉を、土などを間に重ねながら積み重ねて、微生物が増えるように発酵させたもので植物性の堆肥です。
市販もされていますが、自分で落ち葉を集めて作る事も可能です。
市販されている商品でも「ドブのような臭いがする」完熟していない腐葉土も残念ながら販売されています。
この場合、2週間程土の上においておけば臭いも気にならなくなり、市販品でも1ヶ月土の上に置いておくと完熟して安心して使えます。
土壌改良効果が強く肥料成分はほとんどないので、土壌改良をメインしたい場合に使いたい堆肥ですが買うと値段が少し高いです。
バーク堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
植物性 |
樹皮を発酵させて作られた堆肥です。腐葉土との違いは発酵のスピードです。
腐葉土は落ち葉の為分解のスピードが早く、バーク堆肥は樹皮が素材として大きいので分解スピードが遅いです。
分解のスピードが遅いのでゆっくり効果が効いてくる堆肥で、堆肥として土に混ぜる以外に土の上にマルチのようにして使うという方法もあり少し使い方にバリエーションがあります。
樹皮は炭素を多く含んでおり分解の過程で窒素を大量に使うので、窒素飢餓になる事があります。
窒素飢餓を防止する為に、窒素肥料の硫安を90g/㎡程一緒に撒きましょう。土になじむまで年単位かかるので撒きすぎないというのもポイントです。
生ごみ堆肥
窒素 | リン酸 | カリ | 石灰 | 微量要素 | 肥料効果 |
土壌改良効果 | 保水性 | 保肥力 | 排水性 | 種類 | 価格 |
動植物系 |
家庭から出る生ごみを土と混ぜて発酵促進剤の米ぬか等を混ぜて発酵させた堆肥。
投入する生ごみが植物性か動物性か等によって肥料成分は変わるが一般的に肥料成分が高いので完熟した堆肥として使う場合、肥料分を考慮して通常の堆肥の量の30~40%減で使うのが良いです。
入れたゴミによって成分が変わります。
堆肥を使う理由は土壌改良効果
堆肥の効果
- 保肥力
- 排水性
- 保水性
- 土をフカフカにする
肥料を入れるのに堆肥を入れる必要があるのかと思う人もいますよね。
化学肥料など肥料だけ与えていると、土が硬くなって野菜が根を広げられず生育が悪くなるというデメリットがあります。
そこで堆肥を一緒に与える事で、土がふかふかになり野菜が根を広く張ることができるというメリットが生まれます。
野菜の根が広く張ると、栄養分を吸収するのは根なので肥料など栄養分を多く摂取できるので大きく野菜が成長して実もしっかりつきます。
それだけでなく「肥料成分が長く持続する保肥力」「排水性が向上して水はけが良くなる」逆に「水はけが良すぎる砂質の土地は保水性が向上する」という土壌改良効果が堆肥にあります。
堆肥は野菜作りには不可欠ですが入れる順番に注意が必要です。
堆肥を撒く時期とタイミング
堆肥を土に混ぜ込むのは一般的に苗の植え付けの3週間前といわれています。
そして2週間前に石灰、1週間前に肥料を混ぜて当日に植え付けを迎える流れです。
実はこの流れは、消石灰を使う場合なんです。堆肥と消石灰が反応してガスが出るので間を空ける必要があります。
早く入れておくと、未熟堆肥だったとしても完熟堆肥になってしまうのでリスクが低いからこの流れが基本として紹介されています。
これはJA全農でも紹介されており、私の勝手な推測ではありません。
「完熟堆肥」「苦土石灰・有機石灰(カキ殻・ホタテ貝など)」を一緒に使う場合は、どちらも一緒に入れて大丈夫です。
つまり、2週間前に「堆肥と石灰」・1週間前に「肥料」・「植え付け」という流れで大丈夫です。
家庭菜園では植え付けの日時が限られている事もあるので「苦土石灰や有機石灰を使うなら、2週間前に堆肥と石灰と一緒に入れる」でもOK。
完熟堆肥と未熟堆肥の見分け方
完熟堆肥の見分け方
- 色がきちんと黒いか
- 森の土のような匂いがするか、臭くないか
- 一緒に入っている木や草がポロポロになっているか
- 水分でベトベトしていないか
堆肥には未熟たい肥と完熟たい肥があり、完熟たい肥を使うのが大切なポイントです。そこで、完熟堆肥かどうかを見極める方法をご紹介します。
まず、色が黒くなっていることは完熟のポイントの一つです。見た目で判断しやすいですね。
次に、匂いも重要です。完熟堆肥は森の土のような匂いがします。
「鶏糞や牛糞は臭いから近所迷惑で使えない」と言われることがありますが、それは発酵が進んでいない粗悪品を買ってしまった場合です。完熟した堆肥は臭くないので、近所迷惑になることはありません。
堆肥は植物系のワラや木の破片が一緒に入って発酵されますが、未熟なものは植物性の資材がしっかりと形を残しており、ポロポロな状態にはなっていません。
また、サラサラしておらず、水分が多くベトベトしているものも未熟な証拠です。
ホームセンターで販売されている堆肥でもあまりに安いものは未熟な場合がありますので、「完熟堆肥」と書かれているものを選ぶようにしましょう。
未熟堆肥は良くない理由
未熟堆肥のデメリット
- 発酵する際に発生するアンモニアや二酸化炭素で根を痛める
- 窒素飢餓になる
完熟していない堆肥を土の中に入れると、そこで発酵が進みます。
この発酵時に発生するガス(アンモニアや二酸化炭素など)は根を傷めるだけでなく、最悪の場合は苗が枯れてしまうこともあります。
また、未熟堆肥は有機物なので、微生物が分解しようとする際に土中の窒素を使います。
その結果、土中の窒素が不足し、野菜の成長に必要な窒素が足りなくなる(窒素飢餓)ことにつながります。
未熟堆肥を使う場合の注意点
未熟堆肥を買ってしまった人も安心してください。未熟堆肥も完熟させる方法があります。
例えば、腐葉土を買ってドブ臭い場合はまだ発酵が進んでいないので、袋から開けて土の上に広げておいて1ヶ月すれば完熟腐葉土になります。この時に米ぬかも一緒に撒いておくと発酵がより促進されるでしょう。
それ以外の堆肥でも、苗の植え付けの1ヶ月前に土にすきこんでおけば発酵堆肥になります。
「堆肥を土に入れるのは植え付け2週間前で大丈夫」と言われますが、未熟堆肥の場合は2週間では足りません。
未熟堆肥だと結果的に堆肥を入れているのに野菜がうまく育たないという事につながります。
堆肥の適切な量と使い方
堆肥の種類 | 参考にした 商品の容量 | 換算式 | 施肥量 L/坪 | 施肥量 kg/坪 | 施肥量 L/平米 | 施肥量 kg/平米 | ざっくり |
---|---|---|---|---|---|---|---|
牛糞(ぎゅうふん)堆肥 | 15㎏/40L | 1L=0.37㎏ | 20L | 7.4kg | 5.4L | 2kg | ― |
豚糞(とんぷん)堆肥 | 15㎏/30L | 1L=0.5kg | 2L | 1㎏ | 1L | 0.5㎏ | ― |
鶏糞(けいふん)堆肥 | 3㎏/8L | 1L=0.4kg | 3.3L | 1.3㎏ | 1L | 0.4㎏ | ― |
馬糞(ばふん)堆肥 | 7㎏/40L | 1L=0.17kg | 20L | 7㎏ | 6L | 2.1kg | ― |
腐葉土 | 5㎏/18L | 1L=0.27kg | 18L | 5kg | 5.4L | 1.5kg | 用土に3〜4割程度 |
もみ殻堆肥 | 12㎏/40L | 1L=0.3kg | 20L | 6kg | 6L | 1.8kg | 用土に1割程度 |
生ごみ堆肥 | ― | ― | ― | 1.6㎏ | ― | 0.5㎏ | 用土に3〜4割程度 |
バーク堆肥 | 6.5㎏/18L | 1L=0.36㎏ | 36L | 13kg | 10.8L | 3.9kg | 用土に2〜3割程度 |
表の補足情報
- 1坪あたり、1㎡あたりの施肥量
- 同じ種類の堆肥でも商品によって違うので自分の使う商品に書いてある施肥量を参考にする事
表の見方
例.牛糞堆肥の施肥量
- 1坪あたり(リットルなら20L、キログラムなら7.4㎏)
- 1平米あたり(リットルなら5.4L、キログラムなら2㎏)
堆肥を入れる量は表を参考にしてください。
堆肥袋にはリットル表記とキログラム表記がありますが素材の密度によって違うので「何リットル=何キロ」と一概に言えません。
例えば、同じ1リットルでも軽い素材で空気をいっぱい含んでいる馬糞堆肥は0.2㎏になる一方で、粒状に詰まっている鶏糞堆肥では0.4㎏になるという事です。
リットルをキロに直すのは、袋に両方書いてある場合は目安にできる、もしくは㎏で計るしかありません。
毎回計りを使って計測するのが正しい量になるのでおすすめです。
私は調理で使う計りに汚れないようにポリ袋をかけて、100円ショップで買ったプラスチックのボウルをのせて毎回軽量しています。専用の計りを買うのもよいと思います。
そして何より同じ堆肥でも肥料分などが違うので「パッケージに施肥量が書いてある」のでしっかり見て守る事です。
堆肥の疑問&質問
堆肥で初心者が疑問に思う内容を質問形式でまとめています。
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堆肥でよくある質問一覧
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