
- 石灰の種類の違い
- 撒いてすぐに植えられる石灰の種類
- 石灰(カルシウム)を補給する意味

石灰は土壌改良に使いますがPH調整以外にも色々効果があります。土づくりを急ぐから肥料と一緒撒きたい人にもおすすめの石灰を紹介。石灰の違いを分かりやすく解説。
石灰のアルカリ度の違い!家庭菜園でおすすめの石灰!
表の補足情報
- 価格はホームセンターで調査した取り扱い(20㎏)での価格
- 成分やアルカリ度数はある資材の参考値なので商品毎に違いがある
- 使用量は参考値なのでパッケージを参照する事
石灰の違い
- 生石灰
- 消石灰
- 炭カル
- 苦土石灰(苦土カル)
- 有機石灰(カキ殻石灰など)
各石灰の違いを解説します。
生石灰
ポイント
主成分(別名)・・・酸化カルシウム
アルカリ性・・・95%
家庭菜園では生石灰は使いません。
水と混ざると100度近くなり発熱する特徴があります。食品の乾燥剤として使われていて中身は生石灰です。
飛んだ粉が目に入り失明した事例もあるので取り扱いに注意が必要。
消石灰
ポイント
主成分(別名)・・・水酸化カルシウム
アルカリ性・・・72%
植え付け・・・肥料と一緒にまかない。植え付け2週間前。
昔は小学校のライン引きで使われていましたが生石灰と同じく目に入ると失明の可能性があるので現在は使われていません。
強いアルカリ性の消石灰は粘膜や皮膚に触れると、さまざまな「化学外傷」を引き起こします。
アルカリ度が強いので酸性に傾いた土をアルカリに傾ける力が強く即効性がありますが、私は家庭菜園での使用はおすすめしません。
炭カル(タンカル)
ポイント
主成分(別名)・・・炭酸カルシウム
アルカリ性・・・50%
植え付け・・・肥料と一緒に撒かない。植え付け2週間前。
炭カル(タンカル)は炭酸カルシウムが含まれており土壌のPHをアルカリに補正する効果があります。
次に紹介する苦土石灰と基本的な成分は同じですが、炭酸マグネシウムは含まれていないので微量要素であるマグネシウムは補給できません。
家庭菜園ではマグネシウムを補給したくないけど土壌のPHを改善したい場合に使います。
苦土石灰(苦土カル)
ポイント
主成分・・・炭酸カルシウムと炭酸マグネシウム
別名・・・炭酸苦土石灰/苦土カル
アルカリ性・・・55%
植え付け・・・肥料と同時に撒けない。植え付け2週間前。
家庭菜園で一般的に使われるのが苦土石灰です。
先に紹介した炭カル(炭酸カルシウム)に炭酸マグネシウムが混合されているので、PH調整だけでなくマグネシウムの補給もできます。
肥料や堆肥と一緒ではなく「苦土石灰だけを与える場合」は、苗の植え付けをすぐできますし追肥の感覚で与えても根が痛むなどの心配はありません。
ただし、植え付け前の一般的な土づくりで行われる「肥料」と一緒に使う場合は注意が必要。肥料に含まれる「葉を育てる:窒素(N)」と反応してアンモニアガスになり、窒素不足や酸素不足になります。
せっかく肥料を与えたのに窒素成分が無くなってしまうので、「肥料と一緒に撒く場合は肥料を与える1週間前、苗の植え付けの2週間前までに苦土石灰は与える」ようにしましょう。
有機石灰(カキ殻石灰・卵の殻など)
ポイント
主成分・・・炭酸カルシウム
別名・・・カキ殻石灰・卵の殻など
アルカリ性・・・46%
植え付け・・・肥料と同時に撒ける。植え付け当日可能。
家庭菜園で苦土石灰と同じく多く使われるのが有機石灰です。
主成分による違いで種類がありますが、多いのが牡蠣やホタテの殻を粉末にしたカキ殻石灰やホタテ貝殻石灰と呼ばれる物です。他にも卵の殻が主成分である石灰もあります。
貝殻系の石灰には海のミネラル(マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、鉄、モリブデンなど)の微量要素も含まれているのが特徴です。微量要素により葉や茎が元気に育ったり、病気になりにくかったりというメリットがあります。
また、有機石灰の特徴は「肥料と一緒に与える事が出来る」ので植え付け当日に肥料と一緒に撒くことができます。
土壌を穏やかに中和させ、アンモニアガスなどもほとんど発生しないためです。植え付け出来る日が限られている場合など家庭菜園にピッタリ。効果は緩やかです。
石灰の成分は炭酸カルシウムが主成分!
石灰の特徴
- カルシウム欠乏・・・病気になりやすい、枯れたりする
- カルシウムのメリット・・・根が大きく成長、生育がよくなる、収穫量UP
どの石灰にも共通するのが主成分が炭酸カルシウムである事です。
石灰=炭酸カルシウム=カルシウム補給の意味でも石灰は使われ、畑の酸度を酸性からアルカリ性に調整する為だけに撒くわけではありません。
カルシウムが不足すると、例えば「トマトが尻腐れ病になったり」「キャベツの心葉の生育が疎外され葉が内側にまいたり」「シュンギクの先端が黒褐色になって枯れたり」「イチゴの新葉の葉先が茶色になったり」という成長点や葉の先端に近い所に症状が出ます。
カルシウムは水に溶けやすく土の深い所まで浸透し、作物の根も成長させるので生育をよくする効果もあります。
ジャガイモなど収穫量がアップしたり、キャベツの玉がきれいに揃ったり、トウモロコシの太りが良くなったりというメリットがあります。
石灰を畑に撒く理由は酸度(PH)調整のため!
酸度調整の速度
- 即効性・・・消石灰・生石灰
- 遅効性・・・炭カル・苦土石灰・有機石灰
石灰を畑に撒く理由で大きな意味は酸度調整のためです。日本は雨が多い国で、雨が降ると畑は酸性に傾きます。なので何もしない畑の土は酸性です。
野菜には、酸性を好む作物とアルカリ性を好む作物があり、ほとんどの野菜はアルカリ性もしくは中性を好むので畑の土を石灰を撒く事でアルカリ性に近づけて適切な酸度で野菜を育てる事が大切です。
これは、土がアルカリ性か酸性かによって野菜が吸収できる栄養素が変わるのからです。
例えば酸性の土壌だと、カルシウム・マグネシウム・リンなどの欠乏が起こりやすくなります。一方で、アルカリ性だとマンガンや鉄の欠乏が起こりやすくなります。
野菜毎に適切な酸度がありますが、どんな野菜もPH6.0~6.5を目指せば基本的には問題ありません。目検討ではなく、酸度計を使ってしっかりと図るというのが大切です。
植え付けまでの石灰の散布タイミング!
石灰と肥料の関係
- 石灰と肥料を同時に撒きたい人・・・有機石灰(カキ殻石灰・卵の殻石灰など)
- 石灰と肥料をわけて撒く時間がある人・・・タンカル/苦土石灰
土づくりで必要な「堆肥・石灰・肥料」を撒く順番は基本的に「植え付け3週間前に堆肥、2週間前に石灰、1週間前に肥料、植え付け」がベストといわれるのは、消石灰を使う場合です。
「堆肥と石灰を同時に撒いていいのか?」という問題は、消石灰の場合はアルカリが強いので、アンモニアを多く含む未熟な堆肥や肥料と使う場合はアンモニアガスが発生してしまうので1週間あけてそれぞれ与える必要があります。
ただし、実は完熟堆肥を使う場合や苦土石灰を使う場合は堆肥と一緒に混ぜてしまって問題ありません。ただし苦土石灰でも肥料をは間をあける必要があります。
つまり、苦土石灰、完熟堆肥、肥料の組み合わせで土づくりをする場合の植え付けスケジュールは下記のとおりです。
2週間前 | 1週間前 | 当日 |
---|---|---|
完熟堆肥、苦土石灰 | 肥料 | 植え付け |
ただ家庭菜園では植え付け出来る日や準備できる日が決まっている事があります。
そんな土づくりを急いでいる人に使えるのが有機石灰です。
植え付けがすぐ出来る石灰はかき殻石灰など有機石灰!
有機石灰のカキガラ石灰・ホタテ貝石灰・卵の殻石灰などは、アルカリ成分が少な目で効果が穏やかでアンモニアガスもほとんど発生しないので元肥えの肥料と一緒に撒く事が可能です。
時間が限られる家庭菜園にはぴったりのおすすめ石灰です。「植え付けのタイミングの1週間前に完熟堆肥・有機石灰・肥料を撒いておく」という1日の行程で土づくりの準備が可能です。
植え付け当日にこの3つを撒くという方法もありますが、土になじんで肥料効果が出てくるのは少したってからなので、可能であれば1週間前にした方が失敗が無く野菜がうまく育つでしょう。
畑に撒く土壌改良以外で使える石灰の使用方法!
石灰資材の色々な使い方
- ジャガイモの切り口に使う?
- キュウリなどのうどん粉病に効く?
- トマトなど石灰を葉面散布で尻腐病の解消できる?
石灰を使った土壌改良以外の用途でよくある疑問点をまとめます。
ジャガイモの切り口
石灰資材として紹介していませんが、肥料効果のある「草木灰」はアルカリ性分を多く含む資材で苦土石灰のように土壌をアルカリ性にする性質があります。
ジャガイモの種芋を植え付ける時に、乾燥させる時間がない場合など草木灰を切り口に薄くつけて切り口から腐敗しないように殺菌する効果があります。
キュウリなどのうどん粉病に効果?
石灰や草木灰をうどんこ病の対策としてうどんこ病の白い粉がでた野菜にバラバラとふりかけることで、野菜が元気になることが知られています。
ただ経験上、うどん粉病が改善・治療できるというわけでは無く「極々初期のうどん粉病や予防に効果がある程度」です。
トマトなど石灰を葉面散布で尻腐病の予防
うどん粉病と同じく、石灰を葉に振りかける事で尻腐れ病の予防につながる効果があります。
葉ではなく、土壌にしっかりとすきこんで置くことで、カルシウム不足で発生する尻腐れ病を予防できるので土づくりの段階で石灰を入れる事(カルシウム補給)は大切です。
石灰の購入方法と値段でおすすめは100円ショップ?
石灰の購入場所で候補になるのが「ホームセンター」と「100円ショップ」です。
ダイソーやセリアにも「苦土石灰のみ」販売しています。500gや600gと割と多い量の苦土石灰を100円で販売しているので自分の育てる野菜に必要な量が100円ショップで足りる場合は候補になるでしょう。
有機石灰(牡蠣殻など)は100円ショップにはないので、ホームセンターや通販で購入しましょう。
家庭菜園の石灰でよくある質問Q&A
石灰で初心者が疑問に思う内容を質問形式でまとめています。
石灰でよくある質問一覧
苦土石灰と石灰の違いは?
苦土石灰は石灰の1種類です。家庭菜園で使う石灰は、苦土石灰・有機石灰(カキ殻石灰・ホタテ貝石灰・卵の殻石灰など)・炭カル(タンカル)などがあります。
苦土石灰は他2つの石灰と比べて苦土(マグネシウム)が補給できる石灰です。
石灰と草木灰の違いは?
草木灰は草木を燃やした時に出来る灰で肥料として使われますがアルカリ性なので、石灰同様に土壌をアルカリ性に傾ける効果があります。
石灰はカルシウム補給と土壌をアルカリ性に傾ける資材です。
石灰に除草効果や雑草対策の効果がある?
石灰によってアルカリ性に土壌が傾き、スギナなど酸性の土を好む雑草が減る事はありますが除草効果や雑草対策の効果はありません。
石灰窒素と言われる肥料があり、石灰窒素に含まれる除草成分のシアナミドの成分は一年草の雑草を抑制する効果があります。雑草対策では石灰ではなく「石灰窒素」です。石灰窒素は農薬としての登録もある肥料で、センチュウや根こぶ病などの防除にも使えます。
石灰窒素のデメリットは成分のシアナミドが散布後肥料分に代わるまで植え付けができない事です。散布してから植え付けまで10日は間をあけましょう。
石灰を撒くと土が固くなる?
家庭菜園でおすすめしている苦土石灰・有機石灰は緩やかにPH調整効果があるので基本的な使い方では土が固くなる事はありません。
ただし、与えすぎるなど過度な使い方をすると土が固くなる事もあります。家庭菜園ではおすすめしませんが消石灰・生石灰は即効性がありますがアルカリ性が強いので土が固くなります。
石灰で土壌改良ができる?
石灰で土壌改良ができます。土壌のPF調整、カルシウム補給になります。
カルシウム補給の他に、有機石灰なら微量要素のミネラル補給、苦土石灰ならマグネシウム補給になります。
石灰を撒きすぎるとどうなる?
石灰は撒きすぎるとアルカリ性に傾きすぎて野菜に適切な土壌ではなくなる、微量要素を吸収できない状態の土になる、土が固くなるなどデメリットしかありません。
まずは、購入した石灰の袋を見て、自分の畑のサイズをきちんと測定し適切な量を撒く事が何よりも大切です。
撒きすぎた場合は雨が降れば酸性に段々と傾くので石灰を与えず待てばよいです。
予防方法としては、きちんと酸度計を使って酸度を図る、多少撒きすぎても大丈夫なように効果が穏やかな有機石灰を使うようにするのがおすすめです。
石灰とジャガイモにつける?
ジャガイモの種芋を植え付け時に切り口を乾燥させます。乾燥させないで防腐処理する方法に「草木灰」をつけて植え付ける方法があります。
草木灰は石灰と同じくアルカリ性に土壌を傾けますが、石灰ではありません。草木灰は肥料分を多く含んでいるので肥料として考えられている資材です。
石灰と木酢液の相性は?
木酢液は酸性なので石灰硫黄化合剤やボルドー液など強いアルカリ性の農薬と混ぜないようにしましょう。家庭菜園で使う、苦土石灰・有機石灰はアルカリ性が弱いので特に混ぜて使っても問題ありません。
木酢液を葉面散布する場合に苦土石灰を混ぜて散布した時に、トマトの尻腐れ病や灰色カビ病が少なかったなどの話もあるようです。
石灰の粉と粒状の違いは?
石灰は粉状タイプと粒状タイプがあります。粉より粒状の方が撒きやすく便利で、効果はどちらも変わりません。
粉状タイプを土壌に撒く場合は、苦土石灰や有機石灰でも目に入ったり、皮膚に直接触れると皮膚が荒れる・かぶれるなどの場合もあります。しっかりと目に入らないようにマスク・眼鏡・手袋をして吸い込まないようにしましょう。
小さいお子様が周りにいないように注意する事も大切です。
石灰の捨て方は?
生石灰が入っている小さい乾燥剤を含む石灰は基本的には燃えるゴミでしょうが、お住いの自治体によって違うので心配な場合は問い合わせをしましょう。
石灰の中でも生石灰は水と一緒にすると発熱する効果があるので水分が多い物と一緒に捨てるのは気を付けましょう。苦土石灰や有機石灰など家庭菜園で使うものは発熱しません。
私が石灰を捨てた時は畑ではない家の砂利の場所に撒いて水を撒いて溶かしました。
まとめ
- 家庭菜園は苦土石灰か有機石灰を使う
- すぐに肥料と混ぜて使いたいなら有機石灰
- PH調整だけで無く野菜が元気に育つ効果がある
石灰資材の違いを紹介しました。
苦土石灰か有機石灰を家庭菜園では選ぶようにすれば失敗は少なくなります。
土づくりが最も美味しい野菜を作るのに大切なので、良い土づくりを勉強しましょう。