- 連作障害について
- 連作障害の対策
- 連作障害のある野菜・ない野菜一覧
家庭菜園でも連作障害について考えて栽培すると病気が少なくなります。
一番簡単な対策は輪作して、同じ場所に植える野菜の種類を毎年変える事です。
他にもコンパニオンプランツを使ったり土づくりをする方法など複合的な対策が大切です。
連作障害とは
連作障害は同じ場所で同じ種類の野菜を育てる事で病気になったり生育が悪くなったりする事を言います。同じ場所で栽培を控えた方が良い期間が野菜毎に決まっています。
ほぼ全ての野菜が連作出来ないので、同じ場所で育てずに栽培場所を毎年ずらす(輪作:りんさく)のが基本です。
例えば、エンドウを育てた場所では3~5年程は同じマメ科を育てない方が良いです。「同じマメ科」というのは、エンドウだけでは無く枝豆など他のマメ科でも連作障害が出やすいので「同じ種類の野菜=同じ科の野菜」の栽培をしないようにします。
実例として、連作自体を知らずに連作障害対策をしないで、何年も同じ場所でトマトを作っていたら、その場所は「青枯れ病」といって苗が枯れる病気が出るようになってしまった。青枯れ病は現在有効な農薬が無いので、その場所はトマト系の野菜は育たない場所になってしまったというケースもあります。
連作障害は必ず発生するわけでは無くその様子も様々。病気にはならないけど生育が悪く収穫量が少ない等色々なケースがあります。
家庭菜園のスペースは狭く連作障害だけ考えていると育てたい野菜を育てられないので、連作障害が出にくいように土作り・土壌消毒など色々な方法を組み合わせて自分に出来る対策をしつつ「輪作」といって栽培場所を変える方法がおすすめです。
【一覧早見表】連作障害が出やすい野菜・連作障害ない野菜
野菜名 | 科目 | 種目 | 栽培を空ける期間 | 連作を気にしなくて良い |
---|---|---|---|---|
いちご | バラ科 | 果菜類 | 2~3年 | |
トマト | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ミニトマト | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ピーマン | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
パプリカ | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ししとう・唐辛子 | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ナス | ナス科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ゴマ | ゴマ科 | 果菜類 | 0~1年 | |
きゅうり | ウリ科 | 果菜類 | 3~4年 | |
ズッキーニ | ウリ科 | 果菜類 | 0~1年 | |
ゴーヤ | ウリ科 | 果菜類 | 2~3年 | |
かぼちゃ | ウリ科 | 果菜類 | 0~1年 | |
スイカ | ウリ科 | 果菜類 | 4~5年 | |
メロン | ウリ科 | 果菜類 | 3~4年 | |
エンドウ | マメ科 | 果菜類 | 4~5年 | |
インゲン | マメ科 | 果菜類 | 1~2年 | |
枝豆 | マメ科 | 果菜類 | 3~4年 | |
落花生 | マメ科 | 果菜類 | 2~3年 | |
そら豆 | マメ科 | 果菜類 | 3~4年 | |
オクラ | アオイ科 | 果菜類 | 2~3年 | |
トウモロコシ | イネ科 | 果菜類 | 0~1年 | |
ブロッコリー | アブラナ科 | 葉菜類 | 2~3年 | |
キャベツ | アブラナ科 | 葉菜類 | 2~3年 | |
白菜 | アブラナ科 | 葉菜類 | 3~4年 | |
小松菜 | アブラナ科 | 葉菜類 | 0~1年 | |
ほうれん草 | アカザ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
葉ネギ | ネギ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
長ネギ | ネギ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
ニラ | ヒガンバナ科 | 葉菜類 | 3~4年 | |
シュンギク | キク科 | 葉菜類 | 0~1年 | |
レタス | キク科 | 葉菜類 | 3~4年 | |
サニーレタス | キク科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
サンチュ | キク科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
ニンニク | ユリ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
行者ニンニク | ユリ科 | 葉菜類 | なし | |
らっきょう | ユリ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
アスパラ | ユリ科 | 葉菜類 | 3~4年 | |
玉ねぎ | ユリ科 | 葉菜類 | 3~4年 | |
三つ葉 | セリ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
セロリ | セリ科 | 葉菜類 | 0~1年 | |
空心菜 | ヒルガオ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
モロヘイヤ | アオイ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
大葉(シソ) | シソ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
えごま | シソ科 | 葉菜類 | 1~2年 | |
人参 | セリ科 | 根菜類 | 2~3年 | |
サツマイモ | ヒルガオ科 | 根菜類 | 1~2年 | |
カブ | アブラナ科 | 根菜類 | 1~2年 | |
ラディッシュ | アブラナ科 | 根菜類 | 1~2年 | |
大根 | アブラナ科 | 根菜類 | 3~4年 | |
ジャガイモ | ナス科 | 根菜類 | 4~5年 | |
ごぼう | キク科 | 根菜類 | 4~5年 | |
山芋(ナガイモ) | ヤマイモ科 | 根菜類 | 3~4年 | |
自然薯 | ヤマイモ科 | 根菜類 | 3~4年 | |
ショウガ | ショウガ科 | 根菜類 | 4~5年 | |
ミョウガ | ショウガ科 | 根菜類 | 1~2年 | |
パセリ | セリ科 | ハーブ | 1~2年 | |
パクチー | セリ科 | ハーブ | 1~2年 | |
バジル | シソ科 | ハーブ | 1~2年 | |
ルッコラ | シソ科 | ハーブ | 1~2年 |
連作障害は野菜によって出やすい野菜、出ない野菜があるので一覧で紹介。
記載している期間は同じ場所での栽培期間を空けましょう。
連作障害の症状
- 病害虫被害
- 線虫被害
- 生理障害
連作する事で具体的にどんなデメリットがあるのかを紹介します。
病害虫
連作障害で代表的なのが土壌の中の細菌やウイルスが増殖して「青枯れ病・根こぶ病・つる割病・半身萎凋病など」が発生しやすくなる事です。
病原菌の中には特定の野菜にあつまって来る種類の細菌があるので、連作する事で特定の病害虫が増えてしまい結果的に病気になります。
線虫(センチュウ)被害
線虫(センチュウ)と呼ばれる1㎜以下の目には見えない虫が起こす病気で、センチュウの密度が高くなり根こぶ病や根腐れなどを起こします。
センチュウは色々な種類がいますが土の中で10年以上生きる事もあり、一度発生すると長期にわたって被害が出ますがセンチュウの密度を下げるという対策が有効です。
センチュウには様々な種類がいるので、被害が出るセンチュウに効果がある土壌消毒剤を使わないと効果がありません。
生理障害
同じ野菜ばかり育てると同じ栄養素だけ消費するので、土の中の栄養素が偏り、カルシウム不足、カリウム不足、窒素過剰などになります。
栄養素が偏ることで、葉ばかり茂る、花が少ない、実がつかないなど収穫量が減ったり野菜がうまく成長しない生理障害になります。
家庭菜園で出来る連作障害を回避・予防する対策
- 輪作
- コンパニオンプランツ
- 接ぎ木苗
- 耐病性のある品種を使う
- 有機物を土に入れる
連作障害を予防・回避する方法を紹介します。
輪作(りんさく)
同じ場所で同じ野菜(同じ科)を育てないように栽培する区画を分けてローテーションする方法を輪作(りんさく)と言います。
1~2苗しか育てられない本当に狭いスペースだと出来ませんが、ある程度の面積があれば5区画に分けて野菜の栽培計画をたてるとうまく順番に場所を変えられる方法です。
先に区画を分けて、育てる種類を豆類・果菜類・葉菜類・根菜類・永年作物の5種類にわけてローテーションし、5年分の計画を立てることになります。
最初に計画した野菜の種類は同じ大きな種類(豆類・果菜類・葉菜類・根菜類・永年作物)であれば後から変えても問題ありません。
具体的な計画の立て方は別の記事で紹介しています。
コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツは近くで栽培すると、お互いに生育に良い影響がある野菜同士を一緒に植えたりすると互いに生育がよくなったり病害虫が減る野菜の組み合わせの事をいいます。
連作障害に効果のある組み合わせもあります。
例えば、連作障害で被害のでる「センチュウ」を少なくする効果がマリーゴールドにはあるといわれています。マリーゴールドを同じ畝(うね)に植えておき、野菜の栽培終了した時に一緒に土の中にすきこむと効果があると言われています。
接ぎ木苗
「接ぎ木」といって苗を作るときに根本だけ違う種類の植物にする技術があります。これによって、例えば同じ場所で育てたトマトでも接ぎ木苗のトマトは連作障害が出ないようになります。
接ぎ木苗はお店でも売っていますが、通常苗より少し高いです。土地の改良をせずに苗を変えるだけで対策ができる手軽さがあります。
耐病性のある品種を使う
接ぎ木苗を使うのと似ていますが、品種で病気に強い種類があります。
例えば、きゅうりで「褐斑病に強い」「うどん粉病に強い」など書いてある種や苗がホームセンターでも販売されています。
特定の病気が発生しやすいのであれば苗を買う時に品種を選ぶといいです。
有機物を土に入れる
畑の土の中には目には見えない微生物がたくさんいます。この微生物は有機物を入れると分解するために増えますが、連作障害が出る畑では病気を発生させる悪い微生物が増えている状態になっています。この畑で良い微生物を増やす事で、悪い微生物の活動が抑制されて病気の発生が出にくい状態になります。
良い微生物を増やす為には、緑肥作物や堆肥などの有機物を土壌に投入すると微生物が増えて効果的です。有機物が入っていて土壌改良ができる専用の資材も販売しています。
家庭菜園でおすすめな有機物は無料で手に入る「米ぬか」をうまく使いましょう。
米ぬかは無料で手に入るおすすめの連作障害対策!
- 精米機があれば無料で手に入る
- 植え付け1ヶ月前に撒くだけで簡単に土づくりもできる
- 無料で手に入らないと買う事でコストかかる
- ①:生の米ぬかを使う(コイン精米機などで無料)
- ②:植え付けの1ヶ月前に400~2㎏/㎡あたりに入れて耕す
- ③:通常の土づくり(石灰・堆肥・肥料)をする
家庭菜園で出来るおすすめな連作障害対策は「有機物」=「米ぬか」を土に入れて良い微生物を活性化させる方法です。
米ぬかには「炒りぬか」など種類がありますが、連作障害対策で使う米ぬかは「生の米ぬか」です。
入手方法は漬物シーズンにスーパーで販売されたりホームセンターでも販売されています。ホームセンターや直売所などにあるコイン精米機の横で専用の小部屋が用意されていて入れ物を持っていけば無料でもらえます。
使い方は、植え付けの1ヶ月前に米ぬかを土に入れてまぜ、その1週間後から堆肥・石灰・肥料の通常の土づくりをします。米ぬかは土に入れると微生物が分解する為、熱やガスが発生するのですぐに植え付けはできません。
直接米ぬかだけ撒く方法以外に米ぬかは「ぼかし肥料」を米ぬかで作って、化成肥料の代用として使う方法がありベテラン菜園家にも多く利用している人がいます。
作る手間や使い方に慣れる必要があるので初心者にはステップアップの方法ですが、肥料として使いながら同時に連作障害対策・土づくりも出来るメリットがあります。
連作障害が出てしまった場合の対策
- 太陽熱消毒
- 土壌還元消毒
- 土壌消毒剤(農薬)
連作障害が出てしまった後、今後発生しないようにする対策を紹介します。
大きくは2つの方法があり「太陽熱を利用した天然の消毒方法」と、「農薬を使った消毒方法」です。
太陽熱消毒をする
- 太陽の熱と透明マルチだけで低コスト
- 無農薬なので安全で簡単
- 北海道など寒冷地では気温上昇が足りず露地での実施は難しい
- 気温上昇する真夏にしか出来ない
太陽熱を利用したお金のかからない消毒方法で真夏の気温が高い日に、連作障害が出た場所の畝(うね)に透明マルチを張って温度を上昇させて菌を死滅させる方法です。
ただし、この方法は、40℃~60℃に基本的に1ヶ月地温を上昇させる必要があるので気温が上がる中間地や暖地で出来る方法です。ほうれん草など栽培期間が短い野菜の場合は2週間でも良いですが基本は1ヶ月かかります。
北海道や東北など寒冷地などの寒い地域の場合、ビニールハウス・マルチ・トンネルの3重にして正しい効果が認められるので、露地栽培ではしっかりと病原菌が死滅しない事が多いです。そのため、寒冷地の露地栽培で同じように1ヶ月やっても効果がなく病気が発生するという事も。
気温上昇する7月~9月に露地栽培では基本的にしか行えないので、夏野菜を育てている時期なので秋冬野菜に向けて少し早めに切り上げる必要があるなどデメリットもあります。
暖地や中間地に住む人がハウス・露地栽培向けの方法。
土壌還元消毒をする
- 太陽熱と透明マルチと米ぬかだけで簡単
- 太陽熱消毒より10日程短いので簡単
- 必要な温度が低いので広い地域で可能
- 無農薬で安全で簡単
- ドブの匂いがするので住宅街では出来ない
- 潅水作業が必要(潅水チューブ等が必要)
土壌還元消毒と太陽熱消毒の違いは、「有機物(米ぬかやフスマ)を入れるか入れないか」「潅水作業(水をたくさん入れる)」「畝をたてるか」が大きな違いです。
土壌還元消毒では米ぬかを投入し、ビニールで被覆(畝はたてずただピッタリとかける)した状態で潅水チューブを通し潅水(ビシャビシャの状態)にします。
その状態でハウスを密閉、30度以上の地温を20日保ち、有機物(米ぬか)が活発に微生物を分解することで、還元(=酸欠)状態になり病害虫を死滅させる方法です。
40℃~60℃と高温の太陽熱消毒より低温で出来るので、広い地域で可能なのがメリットです。ただし、分解途中にドブのような臭いが発生するので戸建て住宅の庭や畑など近隣に住宅街がある場合はできません。
呼び方が色々あり、下記参考URLの「還元型太陽熱土壌消毒=土壌還元消毒」の事をいいます。
土壌消毒剤(農薬)を使う
- 作物に対応する農薬を使えば効果が高い
- 費用が掛かる
- 同じ農薬を使うと対抗性が出るので種類を変える必要も
- 良い菌も殺してしまう
土壌消毒剤(農薬)を使用すると効果も安定して、コスト面も抑えることができます。
ただし薬剤は用法容量をしっかり守る事が大前提で、対応する作物と病原菌が決まっているのでしっかりと原因を把握できないと効果がありません。
通常の農家で使うような農薬は容量も多く家庭菜園向きではないですが、家庭菜園で使いやすいセンチュウ対策のこんな農薬も販売されています。
野菜栽培中には使用が出来ないので、発生する場所で冬季間や栽培をしない時期に消毒してから作物を栽培しましょう。
連作障害で一番大切なのは土の状態を知る事
- 家庭菜園では米ぬかを使った土作りと輪作が手軽でおすすめ
- 発生した場合は太熱消毒か家庭菜園用の農薬がある
- 接ぎ木苗や耐病性の品種でも回避可能
連作障害でセンチュウが増えて病気になっているのか、土の栄養素が偏って病気担っているのか等を判断するのは素人目では難しい事も多いです。
そこで、一歩踏み込んで家庭菜園をやりたいなという人に是非利用してほしいのが「土壌診断」です。農家では当たり前に行われていますが、家庭菜園ではやった事がない人も多いでしょう。
土の中の窒素・リン・カリなどの成分が数値で出るのでわかりやすいですし、診断の方法によってはその後の対策も提示してくれる物もあります。
自分で簡易キットを使って調べる方法、土を採取して郵送して調べてもらう方法など色々ありセンチュウの量を測定できる物もあるので連作障害に悩んでいる人も解決の糸口が見つかります。
上手に野菜が育たず悩んでいる人や家庭菜園を少し深く知ってやりたい人にはとてもおすすめの方法なので是非試してみてください。