- 野菜別の人口受粉のやり方
- 人工授粉が必要な野菜といらない野菜
- トマトトーンの使い方
野菜も雌花(めばな)に雄花(おばな)の花粉をつける事で雌花(めばな)に果実がなります。
人工授粉をしないと収穫できない野菜があるので、野菜別にやり方など紹介します。
人工授粉メリット
- 無駄な実がなくなり収穫量が増える
- 低温期や雨など天気が関係ない
- 蜂など虫や風の受粉に比べて成功率が高い
- ハウス栽培でも確実に効果を発揮
人工授粉のメリットは授粉の確率が高くなるので収穫量が増える事です。通常は受粉を蜂等の虫が行いますが、雨や低温が続いて虫の活動が鈍いと受粉がうまくいきません。
また雨が降っていて受粉した花粉が流れてしまう可能性がある時にも人工授粉は有効です。
ビニールハウス内などは虫が少なく風もないので、虫にや風よる受粉を期待できないので人口受粉がおすすめです。
人工授粉デメリット
- 手間がかかる
人工授粉のデメリットはなんといっても手間がかかる事。
例えばズッキーニは実がついた雌花(めばな)が早朝しか開花しないので、雄花(おばな)をつけられるタイミング(人工授粉できるタイミング)が決まっています。
開花するタイミングがあるので、遅くとも9時位までには終わらせる必要があります。
一つ一つの花に自分で受粉させる事は株数が多ければ多いほど手間がかかりますが、家庭菜園は株数が少ない場合が多いので人工授粉はおすすめ。
家庭菜園でおすすめな人工授粉の3つの方法
- 筆を使う
- 綿棒を使う
- 花をそのままむき出しにする
家庭菜園で人工授粉をする方法はいくつかあります。
それぞれの方法を紹介します。
筆を使う
一つ目は筆を使う方法。100円ショップで売っている丸い筆で十分。書道の筆は固いので、絵を描く筆や化粧用の筆を使います。
野菜の種類毎に筆を変えたほうが良いのかと悩みますが、特にその必要はありません。耳かきの先端のフワフワ部分の梵天(ぼんてん)でも大丈夫です。
綿棒を使う
二つ目の方法は綿棒です。綿棒のメリットは使ったら捨てられるので便利ですが、先が固いので筆の方がまんべんなく受粉できて確率が高くなる気がします。
花をちぎってそのままむき出しに
筆など使わず雄花(おばな)をちぎり花びらを外して、花粉がついている先っぽを雌花(めばな)に直接つけて受粉させる方法。
イチゴは筆で人工授粉するのがおすめで、この方法は一般的にやりません。
人工授粉が必要な野菜
- ズッキーニ
- トウモロコシ
- かぼちゃ
- イチゴ
- スイカ
- メロン
- マクワウリ
野菜の種類別に人工授粉のタイミングや方法を紹介します
ズッキーニ
やり方 | どの方法でもOK |
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タイミング | 実がついている雌花(めばな)が開いたタイミングで雄花(おばな)を筆・綿棒・雄花の果房を出す方法のいずれかで早朝9時くらい迄に |
成功 | 実がきちんと成長する |
失敗 | 実が腐ったり、いびつな形になる |
ポイント | 株が小さいうちは人工授粉はあきらめる |
株数を多く植えると人工授粉できるからおすすめという記事を見かけます。確かにたくさん植えると雌花(めばな:実)の数が増え「実がついて花開き人工授粉したいタイミングなのに、ちぎる方の雌花(おばな)がない」という事にはなりません。
しかし、育ててみると1本の苗からかなりの本数がズッキーニは収穫できます。普通に栽培できれば10本以上と4~5人家族でも十分な、はっきり言って消費に困る量が取れます。
週末菜園で人工授粉が気軽にできなくていつも受粉しなくて困っている場合などを除き、私は株数を増やすのではなく人工授粉して1株で結実する数を増やすという方法がおすすめです。
株が小さいうちは「雄花(おばな)が無い!」という事がありますが、成長するにつれすぐにたくさん雌花(実)も雄花も出来るので花が無いという心配はなくなります。
最初は失敗しても良いという心構えでいると良いです。
受粉に失敗した果実は食べられないので、株の成長が妨げられるので早めに摘果しましょう。
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ズッキーニの人工授粉の手順(動画)はここをクリック
トウモロコシ
やり方 | 雄穂(ゆうほ:先端のふわふわ)を切り取って雌花(めすほ:実の先のヒゲ)につける |
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タイミング | 実の先のヒゲが出てきたら晴れた日に実施 |
成功 | ヒゲが茶色になりトウモロコシの粒が揃う |
失敗 | トウモロコシの粒がスカスカに |
ポイント | 栽培本数を増やし2列以上で栽培、本数が少ない場合は冷蔵保存 |
トウモロコシの人工授粉は筆や綿棒でも可能ですが、基本的には雄穂(ゆうほ:先端のふわふわ)を刈り取って直接人工授粉させると「アワノメイガ」の被害を減らせてオススメ。
人工授粉以外では風で受粉するのですが、雌花(めすほ:実の先のヒゲ)が出たタイミングと先端のふわふわが出るタイミングが1週間程ずれて受粉がうまくいかないので、多い本数を植えて・1列ではなく2列にして他の苗の花粉か風で飛んで受粉出来るようにしましょう。
家庭菜園で苗の本数が少ない場合で受粉のタイミングが合わない事が考えられます。
対策としては、先端のふわふわが出てきたタイミング(花粉を持った状態)でジップロックに入れて野菜室で保存しましょう。1週間程は保存できます。
実のヒゲが出てきたタイミングで人工授粉しましょう。
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とうもろこしの人工授粉の手順(動画)はここをクリック
かぼちゃ
やり方 | どの方法でもOK |
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タイミング | 実がついている雌花(めばな:実)が開いたタイミングで雄花(おばな)を筆・綿棒・雄花の果房を出す方法のいずれかで朝9時くらい迄に |
成功 | 実がきちんと成長する |
失敗 | 実が腐ったり、いびつな形になる |
ポイント | 受粉した日付をつけておく |
かぼちゃの人工授粉はズッキーニと同じです。
かぼちゃは受粉した日から通常のかぼちゃで40~50日、ミニカボチャで30~40日が収穫の目安になるので人工授粉した花の根元にマークをつけておきましょう。
日付を書いた「タグをつける方法」「マスキングテープをつけておく方法」などがあります。
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カボチャの人工授粉の手順(動画)はここをクリック
イチゴ
やり方 | 筆・梵天(ぼんてん)・綿棒で花を3~4回優しく上下に全体を撫でる |
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タイミング | 開花初日はNG。2日後以降、3~4日以内に |
成功 | 実が成長する |
失敗 | 花がそのまま枯れる、果実がいびつな形に |
ポイント | 開花初日の1日目は花粉が無いからダメ |
イチゴは人工授粉が必要なズッキーニなど他の野菜と違い花が咲くとその1つの花の中に雄しべと雌しべがあります。
花の真ん中にある黄色い円が雌蕊(めしべ)で、その周りを囲むように出ている小さい突起が雄蕊(おしべ)です。
その為、他の野菜でやるような花をちぎって~等をする必要は無く、咲いた花を筆などで優しく円を書くように全体的に撫でてあげればOKで1つの花で人工授粉が完結します。
きれいに全ての雄しべに受粉されないと実がいびつな形になるので全体に花粉が着くように撫でてあげましょう。
開花して4日以内(花びらが落ちる前)までに行いますが、開花後1日目は花粉を出していないので1日目に人工授粉しても上手くいきません。開花後2~4日以内に行います。
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スイカ
やり方 | どの方法でもOKだが花が小さく筆は細いのが良い |
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タイミング | 雌花(めばな)が咲いた開花当日の朝9時頃まで |
成功 | 実が成長する |
失敗 | 実が腐る、形が小さい |
ポイント | 7~8節頃までは雄花が基本、日付を書いておく |
スイカはきゅうりのようにツルが伸びて節(交差する場所)毎に花がつきますが、家庭菜園では1つの苗で4つ程の雌花(めばな:実)が節につきます。
ズッキーニ・かぼちゃと同じように晴れた日を狙って人工授粉をしますが最適なタイミングが開花した当日という非常にシビアな野菜。
雌花(めばな:実)が少ないスイカは、もし雨が続くようであれば傘をさして花が濡れないように人工授粉させたあとビニール袋をかぶせてあげるという方法がおすすめ。
人工授粉から大玉スイカで約50日、小玉スイカで約35日で収穫するので、かぼちゃ同様に受粉させた実に日付を書いたタグをつけておくと良いです。
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メロン
やり方 | どの方法でもOKだが花が小さく筆は細いのが良い |
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タイミング | 雌花(めばな)が咲いたら当日の朝9時頃まで |
成功 | 実が成長する |
失敗 | 実が黄色くなり腐る、形が小さい |
ポイント | 日付を書いておく |
メロンもスイカと同じ方法です。開花当日か翌日しか雌花(めばな:実)が咲かないのでそのタイミングを狙って人工授粉させます。
人工授粉から50日~60日が収穫の目安なので、受粉してタグ付けをしておきましょう。
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マクワウリ
やり方 | どの方法でもOKだが花が小さく筆は細いのが良い |
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タイミング | 雌花(めばな)が咲いたら当日の朝9時頃まで |
成功 | 実が成長する |
失敗 | 実が黄色くなり腐る、形が小さい |
ポイント | 日付を書いておく |
マクワウリはメロンの一種なので、メロンと同じ方法です。
人工授粉から40日前後が収穫の目安なので、受粉してタグ付けをしておきましょう。
間違えやすい!人工授粉がいらない野菜
- トマト・ミニトマト
- きゅうり
- ナス
- ピーマン
- インゲン
- 枝豆
家庭菜園で育てる事が多いこれらの野菜は花が咲きますが勝手に風で揺れて受粉して実がつくので基本的に人工授粉は必要ありません。
実は先に紹介した「イチゴ」もこれらの人工授粉が必要ない野菜と同じで本来は人工授粉は不要なんです。
人工授粉がいらない野菜は、一つの花の中に雌しべと雄しべがある(自花受粉が出来る)ので風がふけば勝手に一つの花の中で受粉して実をつけるので人工授粉が不要です。
ただ、イチゴの場合は成る実の数も少ないので畑やプランターなど野外(路地)で育てている場合でも人工授粉した方が確実ですよという事。
人工授粉がいらない野菜でも、例えばビニールハウスで育てているので虫がいない・風が吹かないので花が揺れて自花受粉しないなどの心配があるので農家ではホルモン処理(トマトトーン)を使ったり、蜂をハウス内に放して受粉させたりします。
不要とはいっても、ここで紹介したトマトなどもイチゴと同じように人工的に授粉させても問題はないんです。
家庭菜園では、勝手に風で揺れて受粉して実がつきますがトマトやミニトマトなどは「トマトトーン」と呼ばれる液体を希釈してスプレーでかけてあげると確実に結実して収穫量が上がるというメリットもあります。
ただ、これらの野菜は優しく花が咲いたら手で揺すってあげて受粉を促すだけでも十分効果がありますよ。
トマトトーンの種類と違い
- トマト・ミニトマト
- ナス
- しろうり・ズッキーニ
- メロン
「トマトトーン」という植物成長調整剤である農薬があります。
着果促進にすぐれた効果があり、受粉しにくい低温時など天候不順の際の着果も安定させる事ができます。トマトなど100%着果するので収穫量が増えます。
注意点は野菜の花だけにスプレーする必要があり、葉や茎にかかっても問題は基本ありませんが生長点や幼葉にかかると悪影響があるので花を手で包み込むようにスプレーをかけます。
ズッキーニの”初期成育期”には十分な効果を発揮しないので使わない、メロンは人口受粉の併用が必要など注意事項があります。
「希釈が必要ないそのままかければOKなスプレータイプ」と「自分で水で原液を薄める希釈タイプ」の2種類があります。
【希釈の必要がないスプレータイプ】
希釈が必要ないスプレータイプはかなりの量で栽培量が多くないと使い切れない可能性があります。
【希釈用の原液で使い切りタイプ】
自分で希釈するタイプで安い商品は蓋が無いので開封したら使い切らないといけないので大変です。
【希釈用の原液で保存できるタイプ】
家庭菜園で私がおすすめなのは「希釈するタイプで使用量を調整できて残りの原液を保存できる」下記の商品です。
水と混ぜた使い残りの希釈液は4週間以内で使い切りが必要ですが、フタがついていて原液は保管しておけば翌年も使えるのでメリットです。
人工授粉でよくある質問
人工授粉で初心者が疑問に思う内容を質問形式でまとめています。
人工授粉の質問一覧
質問クリックすると該当箇所にジャンプ!
人工授粉は雨で流れるの?
- 人工授粉は雨で流れるの?
人工授粉をやる時間は何時まで?
- 人工授粉をやる時間は何時まで?
雄花(おばな)がない!冷凍した雄花でも良いのか?
- 雄花(おばな)がない!冷凍した雄花でも良いのか?
受粉しているかどうかの見分け方は?
- 受粉しているかどうかの見分け方は?
果実栽培でおすすめの機械を使った人工受粉の方法
- みかん/りんご/ブルーベリー/サクランボ/柿/オリーブ/キウイ/スモモ/ナシ/フォイジョア/ポポー
人工授粉が必要なのは野菜だけではなく果樹でも必要です。
最後に野菜の家庭菜園ではあまり使わないと思いますが、人工授粉が必要な果樹で使うと便利なアイテムがあるので紹介します。
まとめ
- 人工授粉は柔らかい筆(絵・化粧)がおすすめ
- 野菜毎に気を付けるポイントがある
- トマトトーンは必須ではない
人工授粉をやる方法を紹介しました。
家庭菜園ではタイミングだけ気を付ければ簡単に出来るので収穫量UPのために是非やってみてください。